はらり、ひとひら。
─神崎くんを、探さなきゃ。
飛鳥たちの静止も聞かないまま走り出した。
どこ、どこにいるの。
どこへ電話をかけたのか知らないけど、恐らく静かで一人になれる場所に向かったはずだ。
息を吸い込むとわずかに妖気がするのがわかった。
灯雅のもの、だろうか。
「あっちだ…」
家から少し離れたところにある林道を抜けるとすこし開けた場所に出た。
今が何時なのかわからないが、彼の手にある愛刀に帯びた炎がぼんやりと二つの人影を映し出している。
近づくとはっきり見えた。気づいた彼が振りかえる。
ふわり。
美しい顔が綻ぶ。
「………追いつかれちゃったか。気配を限界まで消したのに…やっぱりすごいね。椎名さんは」
「っふざけないで…!!」
声が震えた。
そうさせてるのは怒りなのか、悲しみなのか。
「なんでこんなことするの…? ラミーさんにもらったお札は?」
「これは君が持ってていいものじゃない」
ひらりと神崎くんは白いお札を地面に放る。
土に描かれた陣にひとたび触れると、禍々しい気配がして札はチリチリと燃え始める。
咄嗟に身を引いた。
そして、目が痛いほどの瘴気を帯びながら姿を現したのは─黒い、猿のような妖。
ぐげげ、下品な鳴き声をひとつあげたそれは、地面を一瞬で蹴り陣を破るとこちらに向かってきた!
「っ艮に坐す」
だめ、この距離じゃ祓えの文言は間に合わない─!
言霊を…!
「─斬(ざん)」
一瞬のこと。すっと彼が刀を引くだけで、地面にくずおれる。
ぴくり、ぴくりと痙攣を繰り返すそれに向かって彼はもう一度刀を振るうと、今度こそ絶命したようだった。
恐ろしくて力が抜ける。
ラミーさんはなんだってこんなものを…私に…
「契約で縛られていたようだけど、式神ではないね。地獄の使いとか、そういうモンに近いねこりゃ」
灯雅さんが動かない妖を軽く蹴って恐ろしいことを口にした。
「…この匂いは妖じゃない。斬った感触も違った。多分、人工的に造られた何かだよ」
「呪術の類か何かかね。まったく恐ろしいことする輩もいたもんだ」
呪術? 人造物?
頭が追いついていかないけど、明確にいえるのは
ラミーさんは私の命を狙ってた?