はらり、ひとひら。
こっちは全然つまらなくないし、胆が冷えたんだけど。
「まあそんなカリカリしなさんな。ひとまずはこれで、一件落着だろ」
灯雅が宥める様に言った。
だけど神崎くんはまだ何か言いたそう。
「…また、会えるかな、椎名さん。あの少年…いや、薫について話したいことがある」
「!」
やっぱり、神崎くんは薫のことを何か知ってるんだ。
この機会を逃すわけにはいかない。
「…わかった。私も、色々神崎くんに聞きたいことあるから」
こくんと頷いたのを見て安心する。少しだけ前に進めた気がする。
頭の中でいろんな感情が渦巻いていく。
薫が半妖だという事実。
私の命を狙っていた占い師、ラミー。
薫を目の仇にする神崎くん。
今はこの三人のことをもっとよく、知るべきだ。
そして─
「白狐。君が何を考えているのか、俺にはわからない。…いったい誰の指示で動いているの? 君の本当の主は誰?
…椎名さんを危険に晒すことは、たとえ君でも許さないから」
師匠についても。
そう。
わからない。もう、誰を信じていいのかすら。
師匠はにたりと口の端を持ち上げて笑った。
「はっ、世迷言を。私の主は杏子に決まっているだろう」
「…そう、だといいね」
…ぐらぐら揺れる心につられて眩暈がする。
これからどうなってしまうのか。
心の奥底で痛みが増幅していく。これは誰によってつくられた傷なんだろう。
倒れそうになる私の掌を、大きな手が覆った。
刹那、暗雲を裂いて白い光が漏れだしたような気がした。
『俺を信じて』
─あぁ。眩しい。
「…うん」