はらり、ひとひら。
・ ・ ・
「千鶴兄さん? 俺。真澄だけど。今、電話平気?」
「……え? あぁ、うん、そう。そっちは順調? そっか。ならいい」
「─ひとつ、重大な報告があるよ。
見つけたんだ。
平坂薫… いや あの半妖を」
「…ううん、保護はしてない。ちょっと訳ありで、保護は難しいかもしれない。計画を見直すべきだと思う。
あと確証は持てないけど、怪しい人物も一人」
「うん、頼む。こっちはこっちで調べてみる。足取りを追って………」
「ごめん。またかけ直す。邪魔が入った」
葉擦れの音。丸い目を更に丸くして
「やるねえ」とおどける人影ひとつ。
「おかしいなあ~。鼻のいい妖でも気配に気づけないはずなんだけど。
君はやっぱりお利口なんだねぇ。
─騙されやすいあの子と違って」
左右で色の違う目が弓なりに細まる。
愉悦に満ちた顔。
彼を仲間と呼ぶのはもう過去の話。
「…蛟」
「あは、ちがうよ」
裏切りが跋扈(ばっこ)する。
「その名前はもう捨てたんだ。
今の僕の名前は村雨(むらさめ)。
いい名だろう?」