はらり、ひとひら。
「へび…?」
薫の頬に浮いた鱗。そうっと触れてみるとひどく冷たい。
あぁ確かに、この感触は妖なんだって思う。
だけどその下にある薫の顔はどうだ。
まるきり人そのものだ。
これが、半妖。
蛇の妖の母と、修羅の血を引く父親が交わり薫は生まれた?
「……薫、記憶が?」
訊ねると少しの間をおいて、一度頷いた。
「でも全部思い出したわけじゃない。一部、急に思い出して…」
「本当に!?」
それは大変なことだ。
聞かなくちゃ。
ひとまず退いてほしいと伝えれば薫は素直に起き上がって、変化を解いていつもの顔つきに戻った。
記憶が一部戻って、妖力がコントロールできるようになったってこと…?
じんじん痛む肩も修羅の血の力によって、痛みが緩和されていく。ケガの治りが早いのって本当にありがたいな…
姿勢を正して薫の言葉を待つ。
「蔵の書物を読んでたら、急に眩暈みたいなのがして。その眩暈は、ある文字が目に飛び込んだ瞬間起きたんだけど」
「ある文字って…?」
「あ。えーっとこういうの」
指で何かを書いているけどまったく伝わらない。
「…」
「…」
「薫漢字読めるの?」
「書くのが苦手なんだよ…」
書けないけど読めるタイプの人か。
私もどちらかというとそうなんだよな。
うーんと頭も捻る。
「蔵に行って見てみよう?」
そのほうが早いし確実だし。