はらり、ひとひら。
「ちょっと!? 今触っちゃダメって自分で言ったのに!」
「俺は平気だってば。これどうする?」
「うーん…捨てる…? どっかの本棚から落ちてきたのかなあ。今までなかったよね?」
「なかったよ。…怪しいね。捨てよう」
躊躇いなく持っていこうとする彼の腕を掴んだ。
即時実行型! 待って!!
「なに」
「だからってゴミ箱にポイもダメだよ! なんか罠かもしれない、し…」
「……罠?」
怪訝そうに薫の眉が寄る。
「罠ってなに。誰の?」
「う、わかんない…けど。その、私の命を狙ってる誰かとか」
察しがいい彼はすぐに合点がいったようだった。
「あぁ、あの占い師とか」
「っ…疑いたくはないんだけどね。あんなことされちゃ疑わざるを得ないよ」
「ま、そうだな。俺もアイツはなんか気に喰わない。だったら尚更ちゃんと守ってもらわなきゃいけないのにさ。自分から式神捨てるなんて、お前も相当いじっぱり」
返す言葉が見つからず委縮した。
そうだけど…自らさよならしておいてまた助けて、って手を伸ばすなんて自分勝手にも程があるし。
もう、意地でも師匠には頼れない。
これは完全な私の自己責任だ。
多分…怒っているだろうし、次もう会うことはないだろうけど仮に会ったとしたら半殺しにされるんじゃないか。
「ていうか聞き捨てならないなあ。捨てたんじゃないよ…解放したの。師匠を長いこと縛ってたのは私のほうだよ」
「…ふうん」
「それに自分の身は自分で守れる! 伊達に巫女やってなかったんだから」
これでも術の腕には覚えがある。なめてかかると痛い目みるぞ!
ファイティングポーズをとって構えても薫は笑うばかり。
「ぷ、はいはい。わかったから」
「もーーーー信じてないな」
「当たり前。杏子弱そうだし」
ぐりぐり脳天を押してくる薫にむかっ腹が立つのが抑えられない。
こんのガキ…!
「だけどいいんじゃない。杏子くらいなら俺、守ってやれるし」