はらり、ひとひら。
・ ・ ・
side-蛟(村雨)
てん、てん、と毬をつく喪服の童女。
この光景を眺めるのは何度目だろうか。
いつもと変わらないうっそりとした不気味な笑顔は健在だ。
…しかしまあ、よくも飽きないなあ。あんなことずーっと続けて、退屈になっちゃわないんだろうか?
「ねえ君、一体いくつ手毬を持ってるんだい?」
「さあ。数えたことないわ…」
自分の持ち物なのに? 無関心だなぁ。
「えぇ……でもいくつあっても困らないでしょう。綺麗だし…」
「あははっ。そりゃそうだね」
武器は多いに越したことはない。こんな小さい子がどうやって戦うのかわからないけど。
「そういえば…探し物は見つかった?」
思い出したように訊ねられ、ぴくりと眉が反応する。
「…いや。残念ながらまだかなあ」
でも、正直。
「綻びは見えた。気配はする、すぐ近くに」
「…そう。よかったね」
童女は目を細めて笑った。
つられて同じように笑い返すと、毬遊びには飽きたのか縁側までひょっこりやって来て、隣に座った。
「おぉ? 珍しいね。君から近づいてくることなんて滅多にないのに」
「そう? 私、あなたのことけっこう好き」
闇色の目がこちらを見つめる。
やっぱりそれは妖と呼ぶには遠い存在のように思えて。
「あはは。ありがとう」
「村雨は綺麗だから、好き。特に目がすきよ。色の違うお目目…」
「おっと」
ずいっと伸びてくる病的に白い指を躱す。
この子の困ったところは、油断するとすぐ手が出るところ。
こんなところで、しかも仲間に、目を抉られてはたまったもんじゃない。
「どうして逃げるの。いいでしょう少しくらい。神様は不死身なのに…」
「だーめ、いけないよ。治ると言っても抉られれば痛いんだから」
童女は少し不満げに人差し指をぐるりと回した。
本気で抉るつもりだったなこの子…
容赦ない思考回路に肩をすくめる。
参っちゃうなあ。