はらり、ひとひら。
せっかくの晴れ舞台だ。
面白くなきゃあ意味がない。
『芝居』には演出が大事だからね。
薄味じゃあ、つまらない。
「村雨…? どうしたの。随分と楽しそうね」
「あぁ、ごめんごめん。だからねつまり僕はちょっとしたスパイス、ってわけ」
あえて現代風の言い回しを使うと言葉の意味わかってるんだかわかってないのかよくわからないが、童女はまた声も出さずに笑った。
そしてはた、と思いついたように口を開く。
「ねえ。そういえばあなたの探し物って、…なあに?」
あー、それかあ。今の今まで忘れてた。
やっぱり世の中楽しいことばかりじゃないなと嘆息する。
「あなたほどの力があれば、ぱあっと見つけられちゃいそうなのに…」
「そうだったら助かったんだけどねえ。─探し物は、鏡と玉(ぎょく)だよ」
「…鏡……玉?」
頷く。
あれを盗られたのはいつだったか─
「昔、可愛くて小賢しい泥棒がいたんだ。5つあるうちの僕のお宝を、2つも持って行かれちゃって」
だけどもうそろそろ、それの力が必要なんだよね。
「それがないと僕も満足に力を振るえない。前は負けたけれど、今度こそ返してもらうよ」
あぁだけど…あれがないと、あの子たちは姿を"保てない"んだっけ? しかしまあ奉具も随分荒っぽい使われ方してるな。ありゃ反動がすごいよきっと。
「…ま、滅茶苦茶なことする自分が悪いんだよ」
桜子ちゃん。
にひりと笑って、僕は箱庭を後にした。
さあ、ひと仕事する時間だ。