はらり、ひとひら。
ちょこんと掌に載せられたのは白い欠片。
小さな石のようなものだった。
「これは?」
「まじないによって、君の知りたいことが全てインプットされている。それを体内に取り込めば凝縮された知識が脳みそに直接流れて、記憶される。そうだな…叡智の欠片、とでも呼ぼうか」
一体どんな技術だ。思わずため息をついてしまう。そんなものまで作れるのか…
「神はできるのさ。なんだって」
笑った桜子さんの顔は穏やかで、全てを払拭する清さだった。
あぁ。この人になら全部、賭けてもいいかもしれないな。
「さあ、行け少年。門は開かれた。残念ながらもう相見えることはないだろうが…」
瞼がゆっくり落ちていく。桜子さんの声が遠のく。
意識が深い沼底へ引っ張られていく感覚。
そういえば、なぜ白狐があの場所にいるのか聞きそびれてしまった。
それに至る知識も、あの欠片を呑みこんだらわかるだろうか。
頭が真っ暗になる寸前、はっきりと桜子さんの声が響いた。
「白い悪魔と蛟には、気をつけろ」
「─っ!」
跳ね起きた。
壁。机。自分の部屋だ。どうやら無事に霊界から帰ってこれたらしい。
「よか…った」
安堵からずるずると再び布団に沈みこむ。
ふと掌に何かが握られているのがわかる。確認するまでもないが、そっと手を開くと小さな白い欠片がしっかりとあった。
あの一連の騒動はやっぱり
「夢なんかじゃ、ない」