はらり、ひとひら。
『致命傷を受けてる。意識が戻るかどうか………』
「─っ」
すぐに言葉を理解するのは難しかった。
嗚咽を堪える椎名さんの声がなかったら、俺は何も答えることはできなかっただろう。
「なんで、そんな…どこで、通り魔…?」
『いや、医者が言うには傷跡が刃物とか普通のものじゃなかったらしい。多分…』
獣か、妖に喰われた痕だ。
冷たい響きに腹の底から怒りが沸いてきて、食いこんだ爪が簡単に掌を血で染めた。
どうしてこんな仕打ちを…
獣? 妖? 誰の仕業かわからない?
知らない。
誰だっていい。なんだっていい。
脳裏に浮かんだ金髪の、あどけない幼い子。
ぱっと花のように笑う月子が浮かんだが、すぐに打ち砕くようにどす黒い感情が心を曇らせた。
「斬 る」