はらり、ひとひら。
似ている、だけ?
獣型をした妖ではないのか?
問うと千鶴兄さんは眉間に皺を寄せて考え込んだ。
「あの、神崎くん…獣の姿をした妖って、化け妖であってる?」
「うん、ほとんどがそうだけど…どうして?」
「師匠もそうなのかな」
このタイミングで白狐の名前が出てきたのがなぜかわからないが、俺は今までそうだと思っていた。
信じて疑わなかった。当然だと。
だけど今の白狐は本当に妖であるかすら、信じることが難しい。
なんて答えるべきか思案していると、椎名さんは慌てて首を振った。
「ごめんなさい、遮ってしまって。今聞くことじゃないね」
「…そうだね。後でにしよう。俺も、たくさん話したいことがあるから」
「わかった」
こくりと頷いた彼女をふと見ると、随分遠い目をしていた。
それがなんだか異様に恐ろしくて、数秒横顔を見つめたまま固まる。
彼女はこんな目をする子だっただろうか?
「…真澄。話を戻すぞ」
「……っ、ごめん、どうぞ」
俺を一瞥した千鶴兄さんは首を傾げたが、何も口にはしなかった。