はらり、ひとひら。


・ ・ ・


「落ち着いた? 」

「っ、ごめん。取り乱した…」

「私もすびまぜん……」

「いいよ。月子のために泣いてくれてんだろ? 愛されてるなあアイツ」

けらけら笑ってはいるが、千鶴兄さんの目じりも真っ赤だった。

陸兄さんからティッシュを受け取り、息をつく。


椎名さんと並んで洟をかんで、同じタイミングでもらった缶ジュースに口をつけた。
おもむろに前に座った二人がふっと吹き出す。


「なーんかさ、似た者同士だな。お前ら」

「え?」
「はい?」

「喋るタイミングまで一緒」


陸兄さんの突っ込みは珍しい。
無意識だったがどうやら椎名さんと行動がリンクしていたようだ。


「双子っつーか熟年夫婦みてえ」


その言葉は衝撃的だ。雷に打たれた感じがする。

夫婦。…ふうふ。めおと。つがい。


俺と椎名さんが?

ポポポ、と脳内に頼んでもないのに勝手なビジョンが浮かぶ。
可愛いフリフリのエプロンをして台所に立つ幼な妻の彼女が「おかえりなさい」と笑った。

なんだこれ。
なんだこれ。


急にかーーっと顔がほてって誤魔化すように手で口を押えた。


「おーおー、二人して顔真っ赤。お前ら中学生かよ!」

「…っ! ちが」

「ふ、ふ…夫婦うっ!? や、やだーーーーっ何言ってるんですか千鶴さモグァ!?」


タイムロスありすぎか椎名さん。

マジで叫ぶ数秒前、すんでのところで妨害に成功。


「椎名さんここ病院だから…」

「ひゃい、す、すみまへん…」

「静かにしてね」

「はい」


わかればよし。
口の拘束を解くと「夫婦っていうか親子じゃない?」とぽそりと陸兄さんが零した。

それはあんまり、嬉しくないかも…



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