[完]大人の恋の始め方
そんな事を思ってしまうあたしが、おかしいのかなぁ?
「それにしても、予想以上の出来だな、杏里ちゃんは」
と、ニコニコと笑う佐川監督。
「手は出さないで下さいね?」
そんな佐川監督に、優斗さんは、あたしを自分の後ろに引っ張る。
そんな行動に、思わず胸が高鳴る。
「ほぉ。優斗にしては珍しい態度だな」
「先輩が、顔がいいから余計です」
………それ、優斗さんには言われたくないと、思う。
だって、優斗さんは誰もが認めるほどのイケメンだもん。
確かに、監督もカッコイイ。
色白の肌に、奥二重にしては大きな目、高い鼻と、薄いアヒル唇。
優斗さんとたいして変わらない長身でスタイルが良い。
髪の毛は、薄茶のフワフワパーマだ。
でも、やっぱり優斗さんの方がカッコイイと思ってしまう。
「あれ?監督、その子誰ですか?」
いきなり目の前から、顔を覗かれるあたし。
その余りの近さに、ドギマギとしてしまう。
………綺麗な顔。
「中島くん。その子がうわさの杏里ちゃんだよ」
監督の言葉に納得する彼は、主人公である、アイドルの中島蓮(れん)。
26歳の彼は、人気絶頂の国民的アイドルだけあって、一般人とはオーラが違う。