[完]大人の恋の始め方
「えっ?!優里花さん!?!?」
初耳なんですけど!!!
困惑するあたしに、優里花さんは、ただ微笑む。
「杏里ちゃんには、うちに近いうちにスカウトするつもりだったのよ?」
なんでも、このドレスが似合った時点で、モデルはこの子しかいないと、思ったとか。
それは、とっても嬉しいこと。
でも、モデルなんてその会社の顔になることだし、そのドレスを良く見せなくてはならない。
第一、その前には、あたしには家事という大切な仕事がある。
昼間は、学校でとてもじゃないけど働けない。
だからといって、夜には沢山の家事が待っているのだ。
よくよく考えたら、あたしにそんな暇は無いのだ。
「優里花さん、あたしはでもそんな暇ないですよ?」
もしかしたら、諦めてくれるかな?
だけど、優里花さんが、そんな事で折れるわけがなかった。
「それなら心配いらないわよ!」
彼女は、飲み物を貰い、一口飲む。
「土日に短時間での撮影にするから」
その言葉を聞いて、あたしは優斗さんを見る。
「あー…、お前を連れて来るんじゃなかったな」
………ドクンッ
あたしは、優斗さんから目を逸らした。
そうだよね。
仮にも、居候の癖に、何生意気言ってるんだって思うよね…。