[完]大人の恋の始め方
……何?
一人だけ、話に着いて行けないんだけど。
どういう事?
「それは、十分承知。だからこそ、杏里ちゃんは絶対に潰させない」
優里花さんの目は、真剣そのもので、強い意思が伝わってくる気がした。
「そんなの、どこにも保障出来ねーだろ。第一、杏里は勉強が1番大切なんだぞ?!」
優斗さんの目もまた、真剣そんなの。
あたしだけが、何も分かっていない。
「分かってる。でも、芸能界デビューよりは、ましじゃない?」
「は?」
「この子は、すでに片山さんにスカウトされたの。でも、それを私が遮った。結果、諦めて貰うために、私は専属モデルになるって言ったの」
優里花さんは、そう言うと、あたしの肩を叩いた。
「あなたは、強い子だって、信じたい」
………強い子?
「それはどういう…?」
あたしの質問に、優里花さんは笑うだけ。
謎だ。
「なあ、姉貴。杏里と話がしたい」
「え?」
いきなり優斗さんが、あたしの腕を掴む。
「そうね。私は帰るわ。おやすみなさい」
彼女は、そう言うと、そそくさと帰ってしまった。
二人に沈黙が走る。
「優里花さん、一人で大丈夫かなぁ?」