[完]大人の恋の始め方
「心配…してくれたの?」
ちょっとだけ、力が強まる。
「…家事するやつが、いなくなるからな」
「でも、心配でしょ?」
心配には変わりない。
それが、どうしようもなく嬉しかった。
心配なんて、かけちゃいけないのに。
分かってても、嬉しかったんだ。
「いい気になんな」
喜びの感情に浸っていると、優斗さんにデコピンをされる。
「…イタイ。あ、でもやっぱり怒ってるよね?連れて来るんじゃなかったとか…」
まだ、少し痛む額を撫でながら、優斗さんを見る。
けど、何故か優斗さんは目を合わせてくれない。
それどころか、ソファーから離れてしまう。
………やっぱり、怒ってる?
それしか考えらんない。
「……優斗さん」
下を向いてショボくれていると、目の前にココアが出される。
え?と、彼を見上げれば、そっぽを向いて、ココアを出していた。
とりあえず、それを受け取る。
実は、ホットドリンクは結構嬉しい。
肩のとこがないドレスだから、正直寒かった。
偶然なのだろうか…?
それとも…
「杏里」
ココアを見ながら、そんな事を考えていると、優斗さんに呼ばれた。