[完]大人の恋の始め方
「なんで、鍵…」
「あー。先輩に貰ったんだ。それより…」
彼女は、先輩から貰った鍵を見せたあと、真剣な表情であたしを見る。
「杏里。ヒロ先生となんかあったの?」
………ドックン
その言葉で、一瞬で凍り付くあたしの身体。
血が、まるで逆に循環しだしたかのように…。
「…なんで、そう思うの?」
中学在学時には、友美は全然気付かなかった。
勘が良くなったのだろうか?
それとも……、
あたしが異常反応し過ぎたのだろうか?
「昨日、ヒロ先生も杏里も変だった。杏里は先生を押し退けて帰っちゃうし、電話してもでない」
確か、優斗さんに抱き着いたときに、鳴ってたような―…。
「それに、ヒロ先生も杏里を呼び捨てにするし、やたら気にしてたし。明らかにおかしいの」
友美の瞳にあたしが映る。
嫌な汗が額に滲む。
この場を、どう切り抜けようか?
「友、本気で聞いてるからね?逃がさないよ?」
……もし、彼女に昔の事を打ち明けたら、どんな反応が返ってくるのだろうか?
拒絶されてしまう?
引く?
友達でいられなくなる…?
それだくは、どうしても避けたかった。
あたしには、友美が必要なのだ。