[完]大人の恋の始め方
「……別に、なにもないよ?」
苦し紛れに答えたその言葉。
しかし、友美の目は、何もかも見透かしているかのような目。
「何隠してるの?」
いつものふざけた雰囲気なんて、まるでない。
こんな友美、初めてだ。
「ねぇ杏里。友たち、何年間一緒にいると思う?」
急に友美は、目線を反らし、空を仰ぐ。
茶色い髪が、キラキラと光る。
「4年間だよ?友は、この4年間の間、ずっと隠し事も嘘も付かなかったつもりだよ?」
あたしは、ただ友美を見つめる。
確かに、男癖が悪いし、惚れ体質だし、超ミーハー。
でも、自分の悪いところまで、友美は見せてくれていた。
だけど、あたしは…?
先生を好きだった事も、付き合った事も、優斗さんと暮らし始めた事も。
全部言ってなかった。
「ゴメン、友美。話、聞いてくれる?」
あたしは、優斗さんに話したのと同様、友美に昔の話をした。
話し終えた頃には、1時間目が始まっていた。
「あの…友美。黙っててゴメンね?」
友美を見れば、複雑そうな顔をしている。
当然かもしれない。
そもそも、先生と付き合う事からして、世間を無視しているのだから。