[完]大人の恋の始め方
「え?」と首を傾げれば、彼女はにこりと笑う。
「うん。友が思うに、杏里の好きは、憧れだと思う。」
「憧れ?」
友美は、アイスティーにガムシロップを入れながらあたしを見る。
「杏里は、ヒロ先生の事、好きだったと思う?」
コクリと頷けば、彼女は首を横に振った。
「違うと思う。杏里も、先生の顔が好きだっただけだと思うよ?」
心臓が嫌な音を、立て始める。
「あたしも、大翔先生と一緒だったって事?」
"お前の顔がすげぇ好みなんだよね"
あたしは、あんなに最低って思った事を、同じようにしていたの?
「あ、気にしたらゴメン。でも、友もそれは一緒」
「友美も?」
彼女は苦笑すると、携帯を開く。
「見て?男のアドレスなんかいくらでも持ってる。でも、対して顔も性格も覚えてないの」
携帯のディスプレイには、何人もの男の人の名前が、ズラリと並べてある。
「ほんと、バカだよね~。んま、運命の人に会えるのなんか、一握り。友は、そんなのに賭けるつもりは無いから」
運命の人…かぁ。
あたしにも、そんな人、いるのかなぁ??
そんな事を語っていた、あたしの後ろの席で、ガラスが割れた音がした。