[完]大人の恋の始め方
夜。
あたしと優斗さんと、ソファーに座りながらテレビを見ていた。
「そういえば、優斗さん。彼女が元カレとヨリが戻るようにって普通手伝うの?」
優斗さんは、目だけをこちらに向け、くすっと笑う。
「どうだろうな?でも、もし彼女の事、本気でも愛してて、彼女が元カレ好きだったら、そうするかな?」
やっぱり…そうなんだ。
あたしは昼間の出来事を思い出す。
計くん(←呼ばされた)は、莉奈さんがまだ、近藤先輩の事好きなのをあのカフェで知った。
そして、それを莉奈さんに聞いたら、「思い出させないで」と、水を掛けられた。
でも、それで核心した。
自分より、あの人の事が好きだと。
どうにかして戻してあげたかった計くんは、自分がコップを割って、周りに自分達の存在を知らせると共に、悪役を演じた。
そうすれば、近藤先輩が助けてくれると信じて。
なんだか悲しいよなぁー…。
本当に想っても、想い合えないなんて。
「おい、杏里?急にどうした?」
「ん?うん…。本気で愛しても愛して貰えないって悲しいなって………あ」
本気という言葉に、朝の事も思い出した。
そういえば、あたしが大翔先生に本気じゃなかったとか言われたなー。