[完]大人の恋の始め方
「今度は何だよ?」
優斗さんの乾かしたばかりの髪から、シャンプーのいい匂いがする。
「うん。優斗さんは、あたしと大翔先生の事聞いたとき、どう感じた?」
あたしが尋ねた事に対し、終始困った顔を覗かせる優斗さん。
「あ、本音でいいよ?」
「安心しろ。気使うとか考えてないから」
ニヤリと笑う優斗さんに、そうだよね~と苦笑いを浮かべる。
「そうだな…。強いていうなら、子供の恋愛ごっこか?」
「恋愛ごっこ?」
復唱するあたしに、"子供の"をやけに強調する優斗さん。
「それ、どういう事?」
優斗さんはテレビを消すと、あたしを真っすぐ見る。
「要するに、一目惚れしたとか、ただ顔がいいってだけで付き合ってる事」
「同じような事、友美にも言われた」
優斗さんは、それに感心を見せる。
「大人だなぁ~」
「でも、友美は運命の人に逢えるのは一握りだから、自分はそんなのに賭けないって言うんだよ?」
大人過ぎて着いていけません。
「なるほどなぁ~。でもな?俺の考えだけど、運命の人って、出会えるから運命の人なんじゃねーか?」
……運命の人。
「じゃあじゃあ!あたしも逢えるかなぁ!?」
「さぁな?あくまでも俺の意見。ほら、寝るぞ?」
時計を見る、12時を回っていた。
あたしは一言返事をして、自室で眠りに着いた。