[完]大人の恋の始め方
その車は、黒くて、ピカピカで、車に疎いあたしでも、高いものだって分かるくらい、VIPの匂いがした。
車に見惚れていると、中から男性が降りてきた。
「容姿端麗」とは、彼の事を言うのだろう。
黒目が大きなハッキリとした目。
高くて形の良い鼻。
薄くも艶やかな唇。
柔らかそうな栗色の髪の毛。
180cmは裕に超える身長。
スーツの上からでも分かる、程よい筋肉。
チラリと除く鎖骨は、彼の色っぽさを引き立てている。
「そこ、入れないからどいて頂けるかな?」
爽やかな香りが鼻孔をくすぐる。
…………カッコイイ―…
「お兄さんごめんね♪行こうか、可愛い子ちゃん♪」
3人の不良の一人が、あたしの腕を掴む。
嫌だッッ
抵抗しようとしても、男の人には敵わない。
すると、反対側のあたしの腕を、イケメンさんが掴んだ。
「何言ってんの?この子は、俺の家に用があって来たんだよ」
少し、不良を威嚇するような声。
どこかで聞いた事がある気がした。
「ほら、乗りな」
だが、不良とは比べものにはならないくらい優しい声に、思わず胸が脈打った。
そのままあたしは、イケメンさんの車に乗せられ、駐車場に入った。
不良は、何が起きたのか分からないようだった。