[完]大人の恋の始め方
初 撮影
次の日
いつもならのんびりと過ごす今日、あたしは、たくさんの光に包まれていた。
そう、あのモデルが遂に始まったのだ。
あたしは、これからこの会社[Best Life]の看板になる。
だけど、やっぱり初めてのモデルは難しくて。
「もうちょっと、自然に笑えるかなぁ?あと、ドレスの見せ方も」
頭の上には、もうハテナすら浮かばない。
困惑だらけだ。
それでも、ただ一生懸命カメラに向かって笑う。
だって、今着ている黄色いドレスには、明るい笑顔が似合う気がするから。
でも上手くいかない。
「ちょっと休憩しようか」
カメラマンさんの言葉で、あたしはホッと息をつく。
「松本さん。表情の事なんだけど、」
カメラマンさんは、あたしにコーヒーを渡しながら、困ったような顔をする。
「はい。なんでしょう?」
あたしは、コーヒーを受け取って、彼を見る。
「うん。笑顔って選択も、いいんだけど、僕的には、微笑みなんかもありかなって思うんだ」
「それは、明るい笑顔が、あたしには作れないからですか?」
あたしの質問に、言葉に詰まるカメラマン。
「分かりました。微笑み、頑張ってみます」