[完]大人の恋の始め方
「はい、どうぞ」
あたしは、事もあろうにマンションの最上階にいた。
彼は、かなりお金持ちなのか、なんなのか―…。
あたしは、彼に出された紅茶に口を付けた。
「あの、助けてくれてありがとうございました」
かばって部屋にまで入れてくれたこの人は、どれだけ優しいのだろう?
「どう致しまして。大丈夫?」
あたしは、リビングのソファーに座っていて、彼はその隣に座った。
思いの外、肩が近くてドキドキする。
さすがに、イケメンと近いのは、てゆーか男の人なんて緊張する。
ただでさえ、男の人が苦手なのに。
「大丈夫です。あたし、松本杏里っていいます」
「杏里ちゃんか。俺は、高杉優斗だ。」
あたしは、その名前を聞いて、耳を疑った。
だって、高杉優斗って、世界的に有名なヘアーメイクリスト。
普通、ヘアーメイクリストなんて一般人にまで知られる事なんて無いんだけど、高杉優斗は違う。
各有名人が、テレビで口を揃えて指名するんだから。
目が塞がらないあたしに、高杉さんは目を細める。
「もしかして、俺の事知ってた?」
「そりゃもう!!あたし、芸能人とかテレビとか大好きなんですよ!!」
暇さえあればテレビを見るから。