[完]大人の恋の始め方
「俺は話す事ないですけど」
大翔先生が、優斗さんを睨みつける。
「そうですか。まぁいいわ、杏里行くぞ?」
振り返った優斗さんの表情に、怒りとかそんなのは、一切感じられなかった。
…けど、行くってどこに?
首を傾げて優斗さんを見ると、あたしの手が強引に繋がれた。
「ちょっと取引があんだよ。早く行くぞ?」
「取引って、モデルの?」
体育館から出てズカズカ歩く優斗さんの背中に、尋ねる。
「あー、そうだよ。だから早く荷物まとめろ」
着いたのは、あたしのクラス。
一体、どこで調べたの?!
なんて、思いながらもかばんを持って、教室を出る。
やけに視線を感じると思ったら、皆優斗さんを見ていた。
なんか、好奇の目ってより、好意的だ。
まぁ、優斗さんはカッコイイから仕方ない。
でもなんだろ?
ちょっと嫌だ……。
なんで?
と思っていると、隣からヒョイっとかばんを取られた。
訂正。
かばんを持ってくれた。
意外と紳士的な部分もあるから、ドキドキする。
あたし達は、そのまま止めてあった優斗さんの車に乗り込み、会社へ急いだ。
この頃、校内では優斗のファンになった女生徒達が騒いでいたのは、言うまでもない。