[完]大人の恋の始め方




「だれが顔だけなわけ?」



携帯とは反対の耳に、吐息が掛かるようにして聞こえた声。



「っきゃぁー!!!!///」



あたしは耳を押さえて、壁に背中を擦り付けた。



どう見ても、優斗さんだ…。


お風呂上がりで半裸の優斗さんだぁ~ッッ////



「ちょっ…もしもし!?大丈夫?!」

友美の声が聞こえるそれに、答えようとした瞬間、無残にも電話は切られた。



もちろん、優斗さんによって。


「電話の相手と俺、どっちが大切なわけ?」


「そ…れは」


どっちも大切なんですよ。
ハイ。



「ん?」


顔を覗く不機嫌な表情でも、やっぱり優斗さんはカッコイイ。


…って、そうじゃなくて!!!


どっちかなんて選べない。



すっかり黙りこくあたしに、優斗さんは一つため息を漏らし、立ち上がる。



「まさか、お前に顔だけと思われてるとはな?」


「っ……違っ!」



まずい。
非常にまずい。


あたし、最低な事言っちゃった。



「なぁ、俺ってそんなに顔だけなのか?」


…なんか質問がおかしいけど、傷付いてるのは確か。



「違うのッッ。あの、友達に優斗さんが凄いイケメンって言われて、なんかそうなんだけどなんか嫌で…」



アレっ?


「優斗さんカッコイイから、ほんと友達がみんなファンになっちゃうし…」



ちょっと?!
口が勝手にッッ


「あたしは、そんなのが嫌なの!だから…」



< 156 / 500 >

この作品をシェア

pagetop