[完]大人の恋の始め方
「だれが顔だけなわけ?」
携帯とは反対の耳に、吐息が掛かるようにして聞こえた声。
「っきゃぁー!!!!///」
あたしは耳を押さえて、壁に背中を擦り付けた。
どう見ても、優斗さんだ…。
お風呂上がりで半裸の優斗さんだぁ~ッッ////
「ちょっ…もしもし!?大丈夫?!」
友美の声が聞こえるそれに、答えようとした瞬間、無残にも電話は切られた。
もちろん、優斗さんによって。
「電話の相手と俺、どっちが大切なわけ?」
「そ…れは」
どっちも大切なんですよ。
ハイ。
「ん?」
顔を覗く不機嫌な表情でも、やっぱり優斗さんはカッコイイ。
…って、そうじゃなくて!!!
どっちかなんて選べない。
すっかり黙りこくあたしに、優斗さんは一つため息を漏らし、立ち上がる。
「まさか、お前に顔だけと思われてるとはな?」
「っ……違っ!」
まずい。
非常にまずい。
あたし、最低な事言っちゃった。
「なぁ、俺ってそんなに顔だけなのか?」
…なんか質問がおかしいけど、傷付いてるのは確か。
「違うのッッ。あの、友達に優斗さんが凄いイケメンって言われて、なんかそうなんだけどなんか嫌で…」
アレっ?
「優斗さんカッコイイから、ほんと友達がみんなファンになっちゃうし…」
ちょっと?!
口が勝手にッッ
「あたしは、そんなのが嫌なの!だから…」