[完]大人の恋の始め方
「杏里、フランス行く前に明日、ウォーキングの練習するぞ」
リビングから顔を出して、廊下のあたしに叫ぶ。
「あ、うん」
「はっ?!…え?!」
友美は、意味不明な言葉を残し、通話を切られた。
…何?
なんて思ったのも束の間。
いきなり玄関をダンダンと叩かれ、インターホンが連打された。
「えっ??何?!」
明らかにおかしい、その玄関から後退する。
すると、リビングからけだるそうに出て来た優斗さん。
「どんな客だよ…9:30に」
……確かに。
優斗さんは、扉を開けた。
その瞬間、覆い尽くす顔。
うっすら涙を浮かべるその子は、
「友美!?」
どうやら、あたしは入って来た瞬間に押し倒されたようだ。
「新手の襲い方だな…」
なんて、優斗さんは素っ頓狂な事言ってるし。
「なんで?!友に一言くらい相談してよ~ッッ」
え、何を?
肩をガッシリ掴んでブンブン振られたあたしは、既にノックアウト。
「なんで一人で行くの?!」
どこにーッッ!!!
…あ。
もしかして、フランス?
「フランスなら優斗さんと…うぎゃっ?!」
今度は更に力強く、振り回される。
頭か…おかしくなる……うぇっ!!