[完]大人の恋の始め方
「姉貴の夢、ほんとはパリコレで自分のドレスを着てもらう事。」
その言葉は、あたしの肩に、ずんっと重荷を乗せる。
つまり、今回のフランスでの発表会は、あたしにとっての準備期間。
「ねぇ優斗さん。あたしは、夢とかなくて、正直優里花さんの気持ちが、分かってあげられてないの…。そんなあたしが…、優里花さんの夢、背負っちゃっていいのかなぁ?」
昔からそう。
あたしには将来の夢とか、夢いっぱいの気持ちとか、持てなかった。
いつも、その時やりくり出来ればいいやって。
こんな適当な自分が、優里花さんの大事な夢のカギを握ってしまっている。
正直、戸惑いも隠せないのが本音。
「夢がない…か」
「うん…」
あたしは、ソファーに体育座りをして、コーヒーを両手で包み込む。
「……あ」
急に何かを思い付いたような笑みを浮かべる優斗さん。
その笑みは、夜だからなのか、やけに妖艶で…。
思わず胸も高鳴るものだ。
「なぁ。俺、いいこと思い付いたぜ?」
やけに自信満々の彼に、あたしは首を傾げ、つぎの言葉を待った。