[完]大人の恋の始め方
高杉さんに続いて、あたしも車を降りる。
「高杉さん…?」
「荷物あるんだろ?」
…………え?
「まさか、あたしのために…?」
すると、やっぱりフニャと笑う高杉さん。
あたしは家のカギを開けて、自分の部屋に向かう。
部屋に入れば、まだ生活感が残っている。
あたしは、そこから段ボールに荷物を詰めて行く。
「杏里ちゃん、兄弟とかは?」
高杉さんは手伝いながら、あたしに尋ねる。
「居ないですよぉ~。一人っ子です」
あたしは、高杉さんに背中を向けていたから、高杉さんがどんな表情をしていたかは分からない。
もちろん、「じゃあ、やっぱり…」と、高杉さんが呟いたのに気付く事もなかった。
だいたい、部屋の荷物をまとめ終えると、高杉さんが段ボールを持ち上げる。
「あ、高杉さん、あたしが持ちますっ!」
すると、高杉さんはにこりと笑う。
「俺は男なんだから大丈夫。それから、俺の事、これからは優斗って呼べな?」
「えぇ?!でも、年上ですよ?」
第一、あたし男の人呼び捨てとか初ですけどッッ
「あ、敬語も禁止」
なぬッッ?!
「本当にですか?」
「本当。ほら、呼んでみ?」
うぎゃぁ~///
笑顔が素敵すぎるっ//
「まっ…優斗…さん」
やっぱり、呼び捨てはムリッッ///
優斗さんは、ちょっと気にくわなそうな顔をしたが、すぐ笑顔になり「ま、いっか」と笑った。