[完]大人の恋の始め方
そうこうしているうちに、心美がこれまた大きな荷物を持って階段から駆け降りてきた。
あんた、何泊するつもり?
「心、泊まるの1日だよ?」
友美も変に思ったのか、一応心美に確認する。
「あ、間違ってモデル合宿のほう持って来ちゃった!」
そう言ってまた戻る心美。
ズテンッッ
あたしと友美は、心美のバカさ加減に思わずコケた。
「心美、相変わらずだね…」
「バカ健在…」
さっきまであんなにお姉さんだったのにな。
昔からそうだ。
心美はどこか抜けている。
世に言う天然なのか、バカなのか。
難しいラインだ。
再び足音が聞こえ、心美の姿を見る。
今度は、見合った荷物の量だ。
その姿を見てホッとしたのは、多分友美も一緒。
「楽しみだなぁ~!生の優斗さん、会った事ないんだよね~」
よく考えたら、優斗さんって、超売れっ子のヘアメイクリストさんなんだっけ。
皆がなかなか会えないなか、簡単に会える自分が何だか嬉しく感じた。
「ここの最上階だよ」
「すごーいっ」
テンションが上がる二人。
あたしは、セキュリティを慣れた手つきで解除して、部屋へと足を進めた。