[完]大人の恋の始め方
タイプにはピッタリだと思うのだが。
「響なんかじゃ筋肉足りないもん」
「うそ」
「本当。ほらぁ、そういう反応だもんねー」
うんざりとした表情をする。
そんな心美を他所に、あたしと友美は目を見合わせた。
だって、響くんも結構ガッチリしててかなりの筋肉質だから。
すると、リビングのドアが開き、優斗さんが顔を覗かせた。
その瞬間、友美の顔が優斗さんに向けられる。
それが何だか嫌な感じ。
「優斗さん、どうしたんですかぁ?」
「コーヒー」
それだけ言うと、キッチンに滑り込む。
あたしは急いで立ち上がってキッチンに向かう。
そして、コーヒーを煎れる手伝いをする。
隣で作業しているのに、お互い口を開かない。
そんな時、心美が口を開いた。
「優斗さんってさ、杏里の事どう思ってるんですか?」
唐突な質問に、あたしの手が止まる。
チラっと優斗さんを見ると、片方の眉だけが、ピクリと動いた。
そして、いかにも怪訝そうな雰囲気を出している。
「心美、何言ってるの~」
気付いたら、その話から離れようとしていた。
あたしの意気地無し。
結局、聞く事さえ出来ないんだ。