[完]大人の恋の始め方
そう言いながらドレスを受け取り、見えないところで着替えだす。
………うわぁー。
自分で着てみて、絶句する。
真っ赤なドレスは、存在感が抜群。
腰までの上半身は、サテン生地を利用したスタイルがバッチリでる形。
腰から下は、ふくらはぎ辺りまでの、レース生地のフワッとした形。
真っ赤な高いピンヒールを合わせる。
その姿を優斗さんに見せると、まだかぶっているウィッグの毛先を、右手で弄る。
そして、左手はあたしの右頬に添えられた。
五月蝿い心臓。
そんなあたしになんて気付かないのか、優斗さんはあたしをズイッと覗き込む。
視野全体に広がる、端整な顔。
緊張して口を紡ぐと、目を細めた。
「似合ってる。メイクするぞ」
そう言うと、あたし専用のドレッサーの前に立ち、椅子を引いて手招きする。
あたしはそこに向かい、椅子に座った。
ウィッグはそのまま、今度はポニーテールへと、ヘアスタイルが変貌。
メイクはアクセントとして、目元(目尻)に、二つラメが入れられた。
それが終わると、優里花さんが入ってきた。
「杏里ちゃんっ!準備OK?」
「あ、はーいっ!」
そう返事をすると、優斗さんに手を振り、スタジオへ戻った。