[完]大人の恋の始め方
驚くあたしを他所に、カードキーで鍵を開ける。
中へ入ると、夜景が一望出来る大きな窓があり、あたしはそこにへばり付いた。
「すごーいっ!」
「だろう?」
優斗さんは得意げに、景色を見下ろす。
それが様になっていてカッコイイ。
「でも、なんで最上階なんて取れたの?ここってセレブご用達、予約困難のお墨付きホテルでしょ?」
すると、よく知ってるなぁといった顔であたしを見た後、再び視線を夜景へと移した。
「ここは、俺がずっと借りてるからな」
「はい?!」
ずっと借りてるって、つまり、優斗さんの部屋同然で使ってるって事だよね!?
そうだよね?!
え、え、え。
ヘアーメイクリストって、そんなに稼げるもん?
いやいやいやっ!
普通に考えて、いいマンションと、高級ホテルのお金を悠々と支払えるだけの稼ぎなわけない。
いくら優斗さんが凄いからって。
じゃあ、お金はどこから来てるの!?
頭が回らなくなった頃、優斗さんが吹き出した。
「何??」
すると、あたしの頬っぺたをプニプにと触る。
「いやぁ~、なぁに百面相してんのかなと…ッッ」
自分であたしの顔を変にして、さらに笑うらしい。