[完]大人の恋の始め方
あたしは、そっと彼を引き寄せ、頬にキスをした。
慣れないキスは、上手く出来なかったけど、それでいい。
下手くそなりに、あたしは気持ちを伝えたかった。
顔を覗き込むと、真っ赤な顔をした優斗さん。
それを見ると、何だかあたしまで恥ずかしくなってしまう。
でも、それ以上に、耳まで真っ赤の優斗さんが可愛くて、愛しい。
「優斗さんって、可愛いよね」
口からポロリと本音が零れる。
そして、ちらっと優斗さんを見た。
ニヤリっ
何だろう…?
あたしの中の危険信号が点滅し始めてる。
思わず後ずさるけど、ここはソファー。
思うように後ずさる事も出来ず、ただのけ反るだけの形になってしまった。
その上、当然といった様子で、優斗さんが覆いかぶさる。
顔の距離、わずか数センチ。
ソファーの上。
男が女に覆いかぶさる。
そして、優斗さんの含み笑い。
顔が硬直するのが分かる。
だって、この状況ってさ…
ねぇ?!
1つしかないじゃん!!!
心臓がバクバクとうるさい中、優斗さんの顔が、そっと近付いた。
キスの先は怖くても、キスは好き。
その欲望に敵うことなく、あたしは目を閉じた。