[完]大人の恋の始め方
………………が。
いつまで経っても唇に熱は落ちてこない。
不思議に思って目を開くと、丁度バスルームのドアが閉まるのが見えた。
……………え!?
あんなに期待させといて、何もないの?!
何だか、お預けを喰らった犬の気分だ。
でも、そんな事を考えてしまうあたしは、えっちなのだろうか?
だとしたら、多分優斗さんの影響だけど。
あたしはアクセサリー類を外し、ベランダへと出た。
空には星が瞬き、陸上ではビルの光が輝く。
都会のこういう風景って好きだ。
6月の夜は、ちょっと湿っぽくて、温い。
でも、それがまた季節感を出すからいい。
暫く夜景を眺めていると、隣にそっと優斗さんが立った。
お風呂から上がったばかりで、髪の毛からは水が滴って、頬を濡らす。
バスローブから覗く腕は、細くても力強い。
チラリと見える鎖骨に水が流れて、同じ人間なのか。と、考えるくらい色っぽく、カッコイイ。
横目で彼を見て、直視出来なくなったあたしは、再び夜景へと視線をずらした。
今、優斗さんは何を思って夜景を見ているのかな。
そう思ったら、あたしは優斗さんの方を見た。
そして、息を呑んだ。