[完]大人の恋の始め方
その日の夜。
あたしは、優斗さんの髪の毛を乾かしながら、今日の事を話していた。
「男の人といるのなんか、しょっちゅうでね。別にどこもおかしくないはずなんだけど……」
でも引っ掛かる。
そもそも、なんであんなに友美が不機嫌だったのか。
それに最後に聞こえた、男の人の声。
聞いた事があるはずなのに、分からない。
モヤモヤとした雲が、どんどん広がる。
「ふーん…。何だろうな?こんな経験は初めてか?」
優斗さんは渇いたのを確認すると、ドライヤーを奪い、あたしの髪の毛を乾かし始めた。
「うん…。まず電話で不機嫌って事がなかったから…」
いつも明るい声をしている友美の声があんなに掠れるなんて。
何かあったのかなぁ…?
「声が掠れるって言えば、俺飲み過ぎで声枯れた事あるぜ?」
「お酒の?」
「そっ!」
お酒の飲み過ぎ…。
友美も昨日呑んでたのかなぁ…?
でも…、友美ってそんな飲むのかなぁ…。
あたしがやけ酒した日を思い出すけど、確か友美はカルピスを呑んでいた。
もしかして、あんまり得意じゃないのに、飲まされた?
なんて考えるが、あの性格なら簡単に断りそうだ。