[完]大人の恋の始め方
「もしもし?」
やっぱり掠れた友美の声には、違和感がある。
「友美いま、どこにいんの?」
あたしが尋ねると、ちょっとだけフリーズした友美。
どうしたのか気になって、声を出しかけたとき、再び友美の声が耳に届いた。
「保健室だけど…?」
どこかぎこちない友美に、疑問を抱く。
「どこか悪いの?」
「まさか。サボりだよ」
笑いを含んだその声。
確かに友美は、具合が悪いからって保健室に行くような子じゃない。
保健室に行くのは、ケガとサボりと男だけ。
あ…、男?
もしかして、計くんと一緒にいるのかな。
聞いてみようと思ったが、先に声を発したのは友美だった。
「ちょっとさぁ、話があるんだけど…、保健室来てくれる?」
デジャヴュ!!
今全く同じことを言おうとした、あたしにとっては、手間が省けた。
「うん!あたしも話あるから!今から行くね?」
あたしは通話を切ると、響くんの方に向いた。
「友美と次サボるけど、響くんは?」
そう尋ねれば、彼は肩を竦めた。
「俺はいい。俺は中弛みなんかしてられないからな」
ちょっと馬鹿にした口調だから、ムッと睨むと、彼は目が無くなる笑みを見せた。