[完]大人の恋の始め方
「嘘だよ。女同士の方が話しやすいだろ?」
確かに…。
響くんって人は、なんでいつも人のことをよく考えられるのだろうか。
あたしは、先生に見つからないように、小走りしながら、そんなことを考えていた。
保健室に行くには職員室の前を通らなければならない。
授業がまだあと少しあるこの時間に見つかっては、厄介だ。
あたしは慎重且つ迅速に、目の前を通りすぎ、保健室の前まできた。
ノックをすると、中から友美の返事が聞こえ、中に入る。
「失礼しま…あれ?先生は?」
中には先生も計くんもいない。
なんだか、一人でサボってるなんて、意外だ。
「今日は出張という名のデート。葛城(かつらぎ)先生と、藍(あい)先生、デキてるんだってよ」
その情報をどこから仕入れたんだ。
長い脚を組んで、ベッドに座る友美に近寄る。
同性でさえクラッとくる、フェロモン。
もし、男子が二人きりなら、やることはひとつだろう。
「ふーん…。そういえば、計くんは?」
大量放出されたフェロモンに負けじと、平然を装う。
一方の友美は、あたしの質問でその細い眉毛を下に下げた。
「どうしたの?」
珍しい表情をするものだから、あたしは焦ってしまった。