[完]大人の恋の始め方
「人間の心は、誰にも見えないんだぞ?」
妙に落ち着いた声が、友美の胸に重くのしかかった。
確かに、人の気持ちを開けて見ることは誰にも出来ない。
人は、今までの経験の中で、その人の気持ちを推理する。
つまり、勘だ。
だけど、その勘が当たらなくもない。
友の勘は、当たってるに決まってる。
友美は再び計を睨みつけた。
「計の一推測を、友に押し付けないでよ」
すると計は、一つのため息をつき、そして、友美を見つめた。
さっきとは打って変わって、熱帯びた目。
その瞳に捕まると、友美はどうして良いか分からなくなった。
ドギマギする友美を余所に、計は友美の肩に額を当て、寄り掛かる。
そして、蚊の鳴き声のような小さい声でボソリと、でもはっきりと呟いた。
「……………え//」
聞こえなかったから、聞き返したわけじゃない。
むしろ十分に見えた。