[完]大人の恋の始め方
そのあと、計は保健室から出て行ったと言う。
「……なんか、ビックリしたゃってさ」
そう言葉にする友美の顔は、ほんのり赤い。
「友美は、計くんが好きなの?」
首を傾げながら友美を見ると、一気に否定の言葉を突き付けられた。
「そんなワケないでしょ!あんな生意気なヤツっ!!友はあんなヤツ嫌っ!!!」
グーっと血が顔に上ったのが分かるくらい真っ赤。
そんなに否定しなくてもいいじゃんか。
仮にも、計くんは、たぶん友美のことが好きなのに。
だが、それを口にすることは無く、ただ頷くしかしなかった。
「てゆか…、今それどころじゃないし」
ちょっと声が低くなった気がした。
驚いて彼女を見ると、本人もしまった!という表情をした。
「どうしたの?」
「なんでもないっ!」
やけに剥きになる友美が、不自然で仕方ない。
本当は計くんのこと、気になっているのではないか。
そんな事を思わせる。
「はぁー…。てかさぁ、本当に杏里と優斗さんはなんもないの?」
ベッドに二人で寝転んで、互いに顔を見る。
そのうち、睡魔が襲ってきた。
それは友美も同様。
欠伸をする友美が、目に映る。
「なんもないけど、幸せだよ…」
その言葉を最後に、あたし達は眠りについた。
たくさんの感情と共に…。