[完]大人の恋の始め方
「優斗さん、あたしはまだ子供ですか?」
ポロっと出たその台詞に、あたしは固まった。
なに、言ってんの?!
「あ、いや、違くてッッ」
こんなこと聞いて、どうせ子供だって言われるに決まってるじゃんか。
アタフタするあたしの頭をガシっと掴むのは、あなた。
えっ?と見上げると。
優しくそれは降ってきた。
ビックリするくらい、甘くて、優しい。
なのに、胸はどんどん苦しくなる。
不思議。
あたしはいつの間にか、優斗さんのTシャツを掴んでいた。
「杏里、俺が初めてキスマークを付けた相手だ」
恥ずかしいのか、手の甲を口に押し当てている彼は、意外と子供っぽくて。
「初めて?」
「あぁ。俺が独占欲を抱いたのは、お前が初めてだ」
嬉しかった。
優斗さんの言葉が。
嫉妬心しか無かった心に、初めて余裕が生まれた。
「杏里、俺があの時ため息をついたのは……
お前をこんなに不安にさせた過去の俺が、許せなかったから」
やっぱり、あたしは優斗さんが居ないとだめ。
過去なんて、もうどうでもいい。
あたしは、優斗さんが好きなだけなんだから。
あたしは、自ら彼に唇を合わせた。