[完]大人の恋の始め方




暫く二人で、ぼーっと座っていた。



何か話すより、ただ肩を並べている方がいい。



その方が、あたし達は落ち着くのだ。



すると、友美はあたしの肩に、頭をコテンと倒した。



どんな顔をしてるのか、あたしには見えない。



でも、触れた部分から、彼女の不安や、高陽感、心配、いろいろ入り混じった感情が、伝わってくる気がした。




「杏里さぁ、相手のこと、聞かないんだね…?」



不意に口を開くと、そう呟く。


「友美が言わないって事は、聞いちゃマズイのかな?って思って…」



そう返せば、友美は ふふっ と笑った。



まるで、杏里らしい。と言っているみたいに。



「この子のパパはね















中島蓮くんなの…。」





あたしは、ポカンと口を開けてしまった。



たぶん、酷い顔だろう。



でも…、中島蓮?



アイドルの…?



なんで…?



「驚くのも無理ないよね。あの、中島蓮なんだから」




そう呟くと、彼女はあたしから身体を離し、検査結果を見る。



「なんて、言われるのかな…。下ろせに、決まってるかな…?」


今にも泣きそうなその声に、あたしは胸を痛めた。



中島蓮に子供が出来たなんて、報道されたら、きっとファンは減るだろう。



今は中島蓮くんにとって、大事な時期くらい、あたしも友美も分かってる。



だから、友美はあたしにさえ、中島蓮と付き合ってる事を言わなかったんだ。



< 377 / 500 >

この作品をシェア

pagetop