[完]大人の恋の始め方
暫く二人で、ぼーっと座っていた。
何か話すより、ただ肩を並べている方がいい。
その方が、あたし達は落ち着くのだ。
すると、友美はあたしの肩に、頭をコテンと倒した。
どんな顔をしてるのか、あたしには見えない。
でも、触れた部分から、彼女の不安や、高陽感、心配、いろいろ入り混じった感情が、伝わってくる気がした。
「杏里さぁ、相手のこと、聞かないんだね…?」
不意に口を開くと、そう呟く。
「友美が言わないって事は、聞いちゃマズイのかな?って思って…」
そう返せば、友美は ふふっ と笑った。
まるで、杏里らしい。と言っているみたいに。
「この子のパパはね
中島蓮くんなの…。」
あたしは、ポカンと口を開けてしまった。
たぶん、酷い顔だろう。
でも…、中島蓮?
アイドルの…?
なんで…?
「驚くのも無理ないよね。あの、中島蓮なんだから」
そう呟くと、彼女はあたしから身体を離し、検査結果を見る。
「なんて、言われるのかな…。下ろせに、決まってるかな…?」
今にも泣きそうなその声に、あたしは胸を痛めた。
中島蓮に子供が出来たなんて、報道されたら、きっとファンは減るだろう。
今は中島蓮くんにとって、大事な時期くらい、あたしも友美も分かってる。
だから、友美はあたしにさえ、中島蓮と付き合ってる事を言わなかったんだ。