[完]大人の恋の始め方
分かってる。
あたしが泣く場面じゃない。
でも、痛む右手を抑えると、やっぱり涙が出てくる。
こんなに痛いんだもん。
友美は、もっと痛かったはずだ。
あたし、初めて人を本気で叩いちゃった…。
しかも、相手が友美だなんて……最低過ぎるよ……。
泣いても泣いても、涙は止まらない。
それどころか、どんどん胸が痛くなる。
きっと、今1番辛いのは、友美なのに……。
なんであたしが、傍にいないんだろう…。
あたしっていつもそうだ。
友美の異変にも、全然気付かなくて…。
気にしても、ちゃんと聞いてあげることが出来なくて…。
そのくせ、助けて貰ってばかり…。
あたしこそ、最低だ……。
***
ようやく涙が収まったのは、辺りが暗くなったときだった。
このままじゃ、さすがに心配かけてしまう。
あたしは、携帯を開き、時刻を確認して驚いた。
20:55…!?
もう9時近いの?!
慌てて立ち上がると、ちょうど公園に入って来た不良と目が合う。
あ………。
本能的に、身の危険を感じたあたしは、急いで帰ろうとする。
………しかし。
「うわっ!もしかして、松本杏里じゃねぇ!?」
二人のうちの一人が、あたしの腕を掴んだ。
げっ…面倒だなっ……。