[完]大人の恋の始め方
「んんっ!!……バカっ!///ありすちゃんの目の前でなにすんのよ!!」
そう言いながらも、あたしの脈拍は信じられないほど速くて。
「誰が好きだか、分かった?」
ニヤリと微笑む優斗さんの顔が、とてつもなく大好きなわけで。
…敵わない。
「仕方ないから、ヤキモキ妬きの優斗さんって言っときます」
ふて腐れて言ってみるあたしは、かなり素直じゃない。
可愛くもない。
でも……
「ふーん?
そんな顔真っ赤になるほど、俺様が好きなんだな?」
そんな素直じゃないあたしを、受け入れてくれるのは、優斗さんだけ。
「見せ付けてくれるなー。
こっちが恥ずかしい」
ありすちゃんは、はー。と溜息を着いて、鞄を持つ。
「もう帰るんですか?」
「んー、時間が時間だしね?
明日から撮影なの。
あ、撮影…、杏里ちゃん一緒だよね?」
不意に確認するように首を傾げるありすちゃん。
撮影…?
「え、なんの…」
撮影…
「え?映画のだよ?!
杏里ちゃん、ゲスト出演だよね?
近いうち、またよろしく!」
あ。そういえば、今日そんなこと…。
バイバイと手をふる、ありすちゃんの後ろ姿を見ながら、やっと映画に出ることを思い出した杏里であった。