[完]大人の恋の始め方
目を覚ますと、あたしにはブランケットが掛けられていた。
……夢…じゃない?!
慌てて起き上がって、そして。
あたしは、唇に触れる。
……感触が、残ってる気がする。
でも、現実だとしたら、あたし…
優斗さんじゃない人に、キスされた…?
そう思ったら、急に自分が汚く感じて、タオルで唇を必死で拭いていた。
汚い。
汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い!!!!
そんなとき、不意に扉が開く。
ビクッとしてドアを見ると、そこには、優斗さんが立っていた。
「ちょ、杏里!何してんだよ!!」
優斗さんはあたしに掛けより、タオルを奪う。
「優斗さん、さっき部屋にきた?」
もし優斗さんなら…
ただのあたしの勘違い。
でも。
「いや?俺はずっと監督と打ち合わせ。なんで?」
違った。
やっぱり、優斗さんじゃなかった。
「なんで?」
なんて、不思議そうに聞く優斗さんに、本当のことなんて言えなくて。
とっさにあたしは、笑顔でごまかす。
「ううん!なんでもない!
それより、撮影だよね?」
ごめんなさい、優斗さん。
嘘ついて。
ごめんなさい優斗さん。
知らない誰かにキスされて。