[完]大人の恋の始め方
あたしの反応に、優里花さんはくすりと笑う。
「ほ、ん、と、う!
大丈夫よぉ。皆の楽しいネタだから♪」
それが嫌なんですけど。
そんなこと言えるわけも無く、あたしは力無く笑った。
「あ、そんなことより!」
そんなこと?!
「蓮くんにはお礼言っといた方がいいんじゃない?」
「お礼?……あ」
そういえば、助けて貰ったんだよね。
理由も、結構失礼なものだし…。
うん。謝ろう。
「今、中島蓮くんどこに居ますかね?」
「うーん、さっき友達スタッフと出て行ったから、喫煙ルームじゃない?」
「本当ですか!ありがとうございます!」
あたしは、優里花さんに頭を下げると、スタジオのドアを開ける。
「あ、立ち聞き狼…」
「え…?…うわぁ!!」
優里花さんが立ち聞き狼と言って振り返ったけど、その瞬間、強く後ろに引っ張られた。
だから、あたしには聞こえなかった。
「立ち聞き狼に気をつけてね。なーんてね?」
って、可笑しそうに微笑む優里花さんの声が。