[完]大人の恋の始め方
「いったぁ…」
あたしは、鼻を押さえたまま、ゆっくりと顔を上げた。
「優斗さん…、痛いんですけど」
キッと彼を睨むと、逆にフワリと微笑まれるから、あたしの心臓はうるさくなる。
「顔、真っ赤だけど?」
優斗さんは、にやりと微笑み、あたしにぐいっと顔を近付けた。
「うっうるさい!///
そんなことより、立ち聞きなんて最低!」
明らかに、動揺してるのはバレバレ。
だから優斗さんも、面白そうにあたしを見る。
「最低かぁ?
んじゃ、俺もう話し掛けない方がいい?」
嫌だ。
すぐにその言葉が、出そうになる。
どんだけあたし、惚れてるんだろ。
自分自身が可笑しくて。
「何、笑ってんだよ」
「ん?だって、すぐに嫌だって思っちゃった自分自身が、面白くて。
どんだけ惚れてるのかなっ……ん!」
不意をついて、優斗さんが口づけをする。
驚いたあたしだけど、すぐに目を閉じた。
だって、嬉しかったから。
触れるだけのそれは、すぐに離れる。
そして、ゆっくりと目を開くと、そこには悪戯な笑みをこぼす、優斗さんの姿があった。
「付き合ってることバレると恥ずかしいくせに、キスはいいんだ?」
にやにやと笑う彼に対し、あたしはみるみる赤く頬を染めた。
「ふっ。わかりやすい奴」
「いじわる!///」
あたしが、そっぽを向くと、彼はそっと頬にキスを落とす。