[完]大人の恋の始め方




「ま、俺は…」



「え、なに?」



キスをしながら話したため、優斗さんがなんて言ったのか、分からなかった。



ただ優斗さんは、あたしに背を向け、

「蓮くんとこ行くんだろ?」


そう言って歩き出してしまった。



「ねー、なんて言ったの?」



気になって何度か聞いたけど、優斗さんは


「なんでもない」


と一点張りであった。



モヤモヤとしたまま、あたしたちは喫煙ルームに近付く。



あと少し…。
廊下を曲がってすぐの、磨りガラスで囲まれた空間が、喫煙ルームだ。



どんどん近付くと、中島蓮くんと、スタッフさんの会話が聞こえる。



よっぽど話に盛り上がっているのだろう。


やけにボリュームが大きい。



[お前、ほんと……]


[………んだよ、…]


ところどころが切れて、内容までは分からない。



ただ……



[友美ちゃん、そのこと知ったら、泣くだろうなー]



[別にかまわねぇよ。俺は、……ちゃんにしか、興味ねぇから]



[うっわ、サイテー!ははっ]



耳障りな会話が、あたしの耳に入る。



楽しそうに話す内容は、友美を馬鹿にしていて、いかに中島蓮が友美で遊んでるのかが分かる。



あたしは怒りから、爪が食い込むほど、拳を強く握った。



……許さない。



あたしが喫煙ルームに乗り込もうとすると、それを優斗さんが阻止した。



そして、そのまま適当な部屋に連れ込まれる。



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