[完]大人の恋の始め方
そして、あたしの肩を抱き、ぐいっと引き寄せる。
「杏里ちゃんが芸能界に入る前から、知ってるよ!」
その言葉に、あたしの顔が引き攣る。
気持ち悪い。
そんなあたしを知ってか、知らずか。
ありすちゃんは、あたしを引っ張った。
「へー!それは意外!
でも月日より、どれだけ気が合うか、だもんね?」
と、あたしを連れて、メイク室に入った。
「んもー、蓮さんってばやっぱりちゃら男」
そう言いながら、あたしを椅子に座らせる。
「いい?杏里。あんなチャラ男に、引っ掛かっちゃダメよ?
あの人、彼女いるんだから」
あたしに言葉を残し、テーブルにあったオレンジジュースに手を伸ばす彼女。
「え、あの。彼女って…」
友美のこと、ばれてる?
「え、ああ。
沖田美麗よ」
それは、今まさに収録している映画の原点のドラマで共演していた二人。
「うそ…」
「ほんと。だから今回、結構イチャイチャとしてるのよねー。
ドラマがきっかけだって」
どういうこと…?
つまり友美は、二股を掛けられてるわけ?
「あの、結構溺愛してる感じ?」
「ううん。最近は、そうでもない。
ただ美麗ちゃん言ってた。
あいつ、二股掛けてるかもって」
沖田美麗といえば、あのパーティーだ。
かなり感じ悪かった記憶がある。
「てゆーか、彼女いるのに、ほかの女にベタベタと触ってる時点でアウトだよねー」