[完]大人の恋の始め方



呆れたような口調のありすちゃんを、あたしはただ見つめる。



どうしよう?



今凄く中島蓮を殴りたい。



けど、それはさすがにマズイし…。



「杏里?どうしたの?」


ありすちゃんが、あたしの顔を覗き込む。



そして大きな瞳が、あたしを捕らえる。



それは、心を見透かすかのようだ。



「何か悩んでるでしょ?
もしかして、蓮さんのこと好きだった?」


「誰があんな最低男のことなんかっ」



ありすちゃんの言葉に、食い気味に反応して、途中で言葉を止めた。



やばい。
つい感情的になっちゃった。


するとありすちゃんは、顔をぐいっと近付けた。



「なに隠してるの?教えて?
最低男エピソード」



もうあたしが何か隠していることは、核心しているらしい。



まぁ、相談くらいなら、いいよね?



「実は…」



「えぇ?!じゃあ何?!杏里の友達が、二股の相手ってこと?

しかも………中絶してるなんて」



一通り話すと、ありすちゃんは顔を歪めた。



「だから、あたしは中島蓮くんが許せなくて…」



「そうだよね。ほんと最低」



と言いながら、あたしの口に何かを入れる。



「んっ、何?………チョコ?」



口に広がったのは、チョコの甘さだった。



「ムカつくし、最低だけどねー。
今はそれで抑えないと、仕事に響くよ?」



「うん…」



頭では分かっているのだが。



「撮影終わったら、また聞くし!」



ね?っと、軽く頭を撫でてありすちゃんは、部屋を出て行った。



< 446 / 500 >

この作品をシェア

pagetop