[完]大人の恋の始め方
ほんの2、3分で、メイクリストさんが部屋に入ってくる。
「うわー、本物のプリンセスだぁー」
「はい?」
メイクリストさんは入って来るなり、そんな声を上げる。
「だって、今めっちゃ騒がれてるじゃないですかー」
小道具を準備しながら、あたしの顔をまじまじと見る。
なんか…友美みたい。
短いボブは、栗色に綺麗に染められて、艶がある。
黒いカラコンが入ったクリクリの目。
華奢な身体。
見た目は、その辺に居そうなギャルだ。
「あ、遅れたけど、紗弥(さや)っていうの。よろしくね」
急な自己紹介に戸惑うのが、普通なのかもしれないけど、なんだかあたしには、親近感が湧いた。
「杏里です」
「知ってるー。杏里って呼んでいい?」
その人懐っこい笑顔に、あたしは心惹かれた。
「勿論。紗弥さんいくつなんですか?」
ファンデーションを塗られながら、問い掛ける。
「いくつに見えるー?」
そう返されて、まじまじと彼女を見る。
うーん。
あたしより上の雰囲気は、結構出てる。
でも…
「23とか?」
すると、あたしの言葉に、紗弥さんは吹き出した。
「もう28だよー」
「っえ゙!?うそッッ」
信じられないほど、彼女の外見は若い。
「ほんとだよー。だからね、メイクって女の子を輝かせる魔法って、ほんとなんだよ」
ニコッと微笑むその言葉には、説得力があった。